杉原邦生

Kunio Sugihara

COMMENT

1982年生まれの僕たちは、14歳のとき、当時同じく14歳だった少年Aによる大事件のインパクトによって“キレる世代”と呼ばれ、どうやら社会=大人たちからひどく恐れられていたようでした。ですが当然のことながら、実際の僕たちは少年Aのように“キレる”ことなく日常を生きていたので、社会が勝手につくり出した虚像に辟易としていました。反面、そうしたイメージだけが肥大化していく現象に、なんとなく快感を覚えていたような気もします。なぜなら、少年Aの“キレる”という感覚を、まったく理解出来ないことはない、と思えてしまっていたからです。『モンスター』を初めに読んだとき、ダリルという14歳の少年の姿に、あの頃の自分を思い出していました。と同時に、いまも自分の中にある“モンスター”の存在に少しずつ気付かされていくようでした。1980年生まれ、僕と同世代のダンカン・マクミランによるこの戯曲は、観る人それぞれの中にある“モンスター”を静かに呼び起こしてしまう、そんな力を持った作品なのかもしれません。 風間俊介さん、松岡広大さん、笠松はるさん、那須佐代子さんという魅力的な4名のキャスト、2度目のタッグとなる原口沙輔くんによる音楽、そして素晴らしいスタッフの皆さんとともに、エネルギッシュで鮮烈な作品をお届けしたいと思っています。

PROFILE

演出家、舞台美術家。2004年プロデュース公演カンパニー“KUNIO”を立ち上げ、『エンジェルス・イン・アメリカ 第1部「至福千年紀が近づく」 第2部「ペレストロイカ」』、“Q1”バージョンを新訳で上演した『ハムレット』、上演時間10時間に及ぶ大作『グリークス』、大学の恩師でもある太田省吾作品を鮮烈に蘇らせた『更地』などを演出。近年の主な演出作品は、PARCO PRODUCE 2024『東京輪舞』(24) 、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』(23)、木ノ下歌舞伎『勧進帳』(23)、歌舞伎座『新・水滸伝』(23)、ホリプロ『血の婚礼』(22)、COCOON PRODUCTION 2022 / NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』(22)、さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』(21)など。本年9-10月には東京芸術劇場他にて、木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』が控えている。第36回京都府文化奨励賞受賞。